ドラクエ1とドラクエ10の「作者」は?
ここで少し話を脱線させますが、「ドラクエの作者は堀井雄二さんである」と、一般的に広く認識されていますよね。それはもちろん間違いではありません。実際にシリーズ第1作「ドラゴンクエスト」のファミコン版が開発された際、堀井さんはシナリオはもちろん、パラメータの設定など、現在ではプランナーが担当されている部分も含めて、非常に多岐にわたる役割を担当されていました。
ところで、エンディングで表示されるスタッフの人数をご存じでしょうか。ゲーム内では英語表記ですが、わかりやすいよう日本語表記に変えて以下に列記します。
キャラクターデザイン:鳥山明さん
音楽:すぎやまこういちさん
プログラマー:中村光一さん、吉田幸司さん、山森丈範さん
CGデザイン:安野隆志さん(チュンソフト創業メンバー、のちにハートビート、トムキャットシステム)
シナリオ協力:宮岡寛さん(メタルマックスシリーズなど)
協力:RIKA SUZUKIさん、福沢正さん
タイトルデザイン;榎本一夫さん(ジャンプ放送局など、バナナグローブスタジオ前社長)
マニュアルイラスト:土居孝幸さん(ジャンプ放送局、桃太郎シリーズなど)
スペシャルサンクス:鳥嶋和彦さん(集英社取締役、白泉社社長、会長、顧問を経て現在ブシロード社外取締役)
ディレクター:中村光一さん(スパイク・チュンソフト元会長)
プロデューサー:千田幸信さん(スクウェア・エニックス・ホールディングス元取締役)
クレジットされていない方も他にいるとは思われますが、現在のゲーム開発規模と比較すれば、ものすごく少人数であることはお分かりいただけるでしょう。
そして、そうそうたる顔ぶれですよねw
ビッグ3(堀井さん、鳥山さん、すぎやまさん)は言うまでもなく、その後も各業界で長く活躍されている方が多数参加されています。鳥山さんの参加も含めて、現在にまで至る集英社との深い関わりは、ドラクエ1からずっと続いていることが、このスタッフリストからもうかがえます。
この少数精鋭チームでドラクエ1は作られたのですが、堀井さんのお名前は「シナリオ」にしかありません。それでは堀井さんは物語を書いただけなのか?といえば、全くそんなことはなく、このゲームの方向性、演出、コマンド配置、バトルの難易度、モンスターのラフデザイン(※) に至るまで細かく担当されていて、その手書きの資料も大量に残されています。
ドラクエ1における堀井さんは、現在でいえば「ディレクター」の役割なのですが、そればかりか「プランナー」などの役割も含めて、ほとんどを1人で担当されていました。中村光一さんは「ディレクター」としてクレジットされていますが、「プログラマー」も兼任されていることからもわかるように、現在の「テクニカルディレクター」に近い役割だったと考えられます。
さて、それでは、ドラクエ10の作者は堀井雄二さんでしょうか?
これは、何をもって「作者」とするかで解釈が分かれるところです。ストーリーの作者という意味であれば、実際に物語を設計した藤澤仁さんと成田篤史さんということになりますが、堀井さんもドラクエ10で何もしていないわけではなく、ゼネラルディレクターというポジションで、総合監修のような役割を担当されています。ゲームの細部にまではタッチしないものの、堀井さんのアイディアを取り入れて作られたものも多数ありますし、何よりこれまで積み重ねてきたドラクエシリーズがあって、初めて成り立つ存在でもあります。
前掲書「ドラゴンクエストXを支える技術」で、青山さんは堀井さんについて「絶対的な存在」と表現しています。ドラクエ1時代とは、ゲームのボリュームも制作体制も大きく異なる現在では、1人のクリエイターが全部を掌握することは不可能に近いので、かつて堀井さんが担っていた役割を複数のスタッフで分担しつつ、堀井さんの持つ「ドラクエオンラインのビジョン」を具体化させている、といったところでしょうか。
ドラクエ10について、堀井さん1人が「作者」とはいえませんが、少なくともシリーズ全体の生みの親ではあり、その堀井さんがこれまで積み上げてきた「ドラクエらしさ」の延長線上に存在するオンラインゲームであることは間違いないでしょう。
その「ドラクエらしさ」という正体不明の存在に悩まされつつ、面白いゲームにするために日夜奮闘しておられるのが、ディレクターであり、プランナーです。ドラクエ10の歴代ディレクターやチーフプランナーは、ドラクエ10の「作者」に近い位置付けとして考えても差し支えないと、わたしは思っています。
バランス調整と好みの問題
かつてドラクエ2で「ロンダルキアへの洞窟」に心が折れた冒険者は多かったことでしょう。あれはバランス調整する時間すら取れなかったことが原因だと、後に制作スタッフから語られていますが、あの超難関ダンジョンを抜けてハーゴンを、シドーを倒した人は、その達成感も相まって「名作ゲーム」だと感じたでしょうし、どうがんばってもクリアできなかった人は「クソゲー」だと思ったかもしれませんね。
ドラクエ2(ファミコン版)の難易度は極端に高かったのですが、スーパーファミコン以降のリメイク版では、しっかり調整された結果、それほど難しいゲームではなくなりました。そうなると今度はヌルくなったと言われたりもするわけです。まさに帯に短し襷に長し…
ゲームのバランス調整というのは非常に難しいもので、100人がプレイして、その100人が同じ程度の満足感を得られるゲームを作るなんてことは不可能ではないでしょうか。簡単すぎてもつまらない。難しすぎてもつまらない。しかし簡単、難しいを感じるラインはプレイヤーによって千差万別です。より多くの人が満足するであろう「落としどころ」を作らなければならないのです。
小澤さんについては、Ver.3まではバトルプランナーチーフを担当していたという経歴からも、批判の矢面に立つことが非常に多く、お名前で検索すると、毀誉褒貶どころか罵詈雑言に近いコメントすら目につきます。今回の退任についても「辞めてくれてよかった」とか…
おそらく、そうした「不満」を小澤さんに対して投げ続けてきた人は、今後どんなに優れたCPが就任したとしても、きっと同じような不満をぶつけ続けるでしょうね…w
わたしも決して、ドラクエ10というゲームに100%満足しているわけではありません。
バトルに関しては、そもそもエンドコンテンツへの興味が薄いので、そこに不満を覚えることは少ないのですが、基本的にはいわゆる「聖女ゲー」といいますか。いきなり一撃を食らって沈むようなバトルは、あまり好きではないのです。試練の門で最後に追加されたドミニオンズガードとか大嫌いですw
そういう細かい不満はありますが、それでもドラクエ10というゲーム全体には概ね満足しています。個人的な指標で点数をつけるなら80点以上、90点でもいいかもしれません。それくらいドラクエ10というゲームとその世界が好きなので、これまで長年にわたって続けているわけです。
不満と表現しましたが、だからといってドミニオンズガードを弱体化してほしいとは全然思っていません。バトルが苦手なわたしに寄せて調整すると、今度はバトルが好きな人にとっては「ヌルすぎる」という不満になります。苦手ながら倒せなくはないですし、現状でいいと思っています。嫌いは嫌いですが←
100%自分好みに作られたゲームなんて、そうそうないでしょう。誰しも多かれ少なかれ不満はあり、それでもどこか楽しい部分があるからこそ、それで遊んでいるのだと思います。
楽しくなくなったら?
止めればいいだけではありませんか?
ドラクエ10はゲームなんですから、楽しくもないのに続ける意味がありません。そして、ここをこうした方が楽しくなるという建設的なアイディアがあるのなら、提案広場に書けばいいのです。スタッフへ個人攻撃なんてしていても、何も変わらないのですから…
ところで、ドラクエ10を「引退」あるいは「休止」して、FF14へ行く人はわりと多くいます。わたしのように渡り歩く人もいますが、多くの人は行きっぱなしになりがちです。ただ、それはその人にとって「好みのゲームがドラクエ10よりもFF14だった」というだけのことであり、限られた時間でどちらかしかできないのなら「より好きなゲーム」を選択するのはごく自然なことです。
それも結局は好みの問題なので、ドラクエ10よりもFF14が好きだという気持ちを否定することはありません。誰しも合うゲーム、合わないゲームというのはありますからね。ただ、ドラクエ10を現役で楽しんでいるプレイヤーがいる場所で、FF14を絶賛するのはいいとしても、ドラクエ10をボロッカスに言うのは、ちょっとモラルとしていかがなものかと思ってはいますw
コメント
私がドラクエ10を始めたのが2021年5月とかで、それ以降ドラテンTVを見るようになって、小澤さんはTVでおなじみの人って感じで見てましたが、自分で掘り下げて調べたことがなかったので、小澤さんがどういう方なのかとても勉強になりました!!
細かい部分とかがすごく丁寧に書かれていて、スタッフの方への愛情など共感できる部分が多かったです。
小澤さんが次どういった活動をされるのか…ほんと気になりますねえ!
シャッポさんありがとうございます!
色々と下調べしすぎるので書くのに時間がかかり、読むのも時間がかかってしまうのですがww
小澤さんは、ちょっとした問題発言があったのも事実ですけど、これまで10年+開発期間、しっかりわたしたちを楽しませてくれたのもまた事実だし、余人をもって代えがたい才能の持ち主なのは間違いないと思っています。次の仕事も応援していきたいですね♪
小澤直美ってあのギスギスを楽しんで下さいとか言った人?
そんな人辞めてもらって当然では?