おわりに
ドラクエシリーズのストーリーは、明るく健康的で希望ある未来に向かって進む!みたいな、光あふれる内容だけではなく、非常に屈折していて、終わった後にとんでもなく憂鬱な気分になるものも少なくありません。
ドラクエ7は、序盤の物語からして非常に憂鬱なことで有名ですが、思い返してみれば、ピサロとロザリーの物語であったり、父を眼前で殺害された挙句、教団の奴隷に身を落とされて10年過ごす主人公であったり、なかなかエグいストーリーがそこそこあったのも事実です。
ドラクエ10でも、その点は決して負けてはいません(勝ち負け?w)
なんせ、Ver.1のシナリオを中心となって手掛けたのは、あのドラクエ7の序盤「ウッドパルナ編」や「ダイアラック編」を手掛けた藤澤仁さんであり、Ver.2以降のシナリオを引き継いでおられるのも、同じくそのドラクエ7でシナリオアシスタントを務めた成田篤史さんが中心となっていることもあってか、どす黒い感情といいますか、人間(ここでは種族としてではなく、アストルティアにおける知的生命体としての人間、人類)の恐ろしさが描かれたシナリオは多いです。
#DQ10 6.1~6.2を通じて思うのは(ストーリーには触れませんが)、大魔王より人間の方が、よっぽど怖いw
そのへんはDQ7にも通じるところがありますね。
— ルナクル(DQ10)/Lunacle(FF14❖Atomos) (@dqx_lunacle) July 7, 2022
レーンの村では「少女探偵ルベカちゃん」というクエストシリーズがありますが、そのコミカルなタイトルと打って変わって、黒ドラクエ10の代表ともいうべき、激しいどす黒さです。なんせ、村人がよってたかって幼い少女に瀕死の重傷を負わせ、薬品で声まで奪い、しかも最終的にその被害少女は自ら滝に身を投げるんですからね……
現実世界でも、人間のどうしようもなさ、そしてそのやるせなさを感じることは多々あります。最近のロシアによるウクライナ侵攻を挙げるまでもなく、人間が戦争などの極限状態において、悪魔以下としか形容しようもない行為をすることは、歴史が物語っています。最近も選挙演説中の元総理が銃撃されるという、あまりにも痛ましい事件が、この日本で起きてしまいました。そうした様々な殺人事件なんかもそうです。非常に残忍で、むごたらしい。他者の幸せを破壊し、生命すら殺めてしまえという考え方は、古今東西あとを絶ちません。そういうことを考えていくと、本当に人類ってどうしようもない存在だなと、厭世的な気分にもなってしまいます。
だけど、どうしようもない人類だから、それならいっそのこと滅びてしまえばいいのか?というと、そこには必死で抗いたい自分もいるのです。
ドラクエ10においても、「こんなどうしようもない種族(人類)は滅ぼしてしまえ」と、あるいはそれに近いことを考え、実行に移そうとする敵が度々登場しています。
端的にいえばVer.6で登場する「悪神」たちも、ほとんどの行動原理はそれです。ある種の呪いで極端な考えが増幅させられているとはいえ、「こんなどうしようもない奴らを一度滅ぼしてしまった方が、より良い世界を築ける」と、そういう趣旨の発言があります。それはつまり、その「悪神」たちも、それまで表には出していなかったものの、心の片隅にはそういう考えもあったからこそ、その悪意の部分が強められ、悪神化したともいえるわけです。
そして、それらに必死で抗うのが、わたしたち主人公です。
人類は本当にどうしようもない存在といえる内容を散々見聞きさせられ、それでも必死でその人類を滅びから守ろうとするのです。
そして、どうしようもない人類のひとりであるわたしたちも、そんな自身の投影たる主人公の姿を見て、様々なことを考えさせられるのです。じつに奥の深い物語だと思っています。
いやぁ~、ドラクエ10って本当にいいものですね!(水野ルナオ←)
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