特損221億円とドラクエ12開発の行方

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Astoltia Side (DQ10)アストルティア雑記
 
特損221億円とドラクエ12開発の行方

特損221億円とドラクエ12開発の行方

2024年4月30日、スクエニHDからあるプレスリリースが出されました。

これによると「当社グループが開発中であったパイプラインを精査した結果、2024年3月期にコンテンツ廃棄損として、約221億円を計上する見込み」とあり、株式市場のみならずゲームファンの間でも話題になりました。

これに先立ち、3月27日の取締役会において「HDゲームタイトルの開発方針の見直し」が決議されています。それに基づいて精査された結果、HDゲームのうち一部開発案件の制作中止などが決定され、その結果として計上される特別損失が221億円に達する見込みというのが、今回の発表内容です。

先に書いておきますと、ドラクエ10と直接の関連はないものと思われます。スクエニでは、ゲーム全体を「デジタルエンタテインメント事業」とカテゴライズしていますが、その中でもドラクエ10やFF14は「MMO」に区分されていて、「HDゲーム」とは明確に区別されているためです。

とはいえ、ドラクエシリーズ全体として見た場合、今回発表された「コンテンツ廃棄」と、決して無関係とは言い切れないため、そのあたりについて今回は書いてみます。

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「特別損失221億円」をもたらしたHDゲームとは?

今回発表された「特別損失」とは、一時的な損失を意味します。その内容を「コンテンツ廃棄損」としているため、開発中だったHDゲームの制作を中止などしたことにより、それまでにかかっていた開発費用などを損失として一時的に計上する、ということです。簡単にいうと、当期の損失として「膿を出し切る」ことにより、経営上の傷口が広がらないようにするために行われます。

さて、この巨額損失をもたらした「HDゲーム」とは、一体どの作品を指しているのでしょうか?

経営陣が「コンテンツ廃棄」を決断せざるを得なかった作品は、開発が想定を超えて長期化してしまい、巨額の開発費が毎年ふくらむ状況であるにもかかわらず、当初想定していた発売時期を大幅に超過しても完成に至っていないタイトルだと思われます。この条件を満たしていることが推察され、ドラクエの新作を楽しみにしているわたしたちがパッと思い浮かぶのは、次の2タイトルでしょう。

  • ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎(ドラクエ12)
  • ドラゴンクエストIII そして伝説へ… HD-2D版(ドラクエ3 HD-2D)

これらは共通して、2021年5月27日「ドラクエの日」に製作が発表されたにもかかわらず、3年近く経過した現在までに、その続報が何ひとつ発表されていない作品です。「ドラクエ3 HD-2D」に関しては、ある程度のゲーム映像までは公開されましたが、「ドラクエ12」はサブタイトルとロゴしか公表されていません。

※動画は配信元の都合により非公開化または削除されることがあります。

もちろん、FFなど他のIPであったり、発売を発表済みのタイトル以外にも、未発表のまま開発中止となったタイトルも存在している可能性はありますが、製作費が巨額で、長期間にわたって何も新情報が出ていない、つまり開発が難航していると推察されるのは、やはり上記ドラクエの2タイトルが浮かびます。

そのため今回の発表以降、ドラクエ12の開発が中止されたのか?と見る向きもあるようです。

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株式市場の反応

今回の特別損失が発表された後、株式市場はどう反応したでしょうか。

発表前日、4月26日の終値は5,731円でした。4月30日の終値は5,718円と小幅に下げた程度で、この日の取引時間終了後に、今回の発表が行われています。

そして発表翌日、5月1日の終値は6,012円と上昇し、5月2日の終値は6,153円とさらに上げています。巨額の特別損失が発表されたにもかかわらず、株価は大きく上昇したのです。

先程、特別損失のことを「膿を出し切る」と表現しましたが、不採算状態が続いているゲームの開発に終止符を打つことで、それ以上に傷が広がらないようにと食い止めたことが、株式市場では好意的に評価されたのだと考えられます。この後、5月13日には2024年3月期の決算発表が予定されているため、そのときに具体的なタイトルなどにも言及される可能性があり、さらなる株価の変動も起こり得るため、注意が必要です。

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ドラクエ12開発中止の可能性

今回の発表後、X(旧Twitter)では「ドラクエ12」がトレンド入りするなど、一時話題になりました。それはポジティブな話題ではなく、「開発中止されたのはドラクエ12ではないか」という憶測によるものです。上でも書いたように、巨額の製作費に対して開発が難航していると考えられるタイトルの筆頭格だからです。

ここで、これまでのドラクエシリーズ(ナンバリングタイトル)について、その発売日と前作発売日からの日数を表にまとめてみました。

ドラクエシリーズ発売日一覧

ドラクエシリーズ発売日一覧

過去のドラクエシリーズは、何度も発売延期をくり返してきたことは有名ですが、それでも数年おきに新作がリリースされていました。ドラクエ6以降は、前作からの間隔が1000日を超えるようになっています。この日数が増えるほど開発期間も長くなるので、必然的に製作費も高騰することになるわけです。

開発期間とは、厳密には「開発開始からマスターアップまでの期間」なので、必ずしも「前作発売から次作発売までの期間」ではありません。MMOのためスタンドアローン版と事情は異なるものの、ドラクエ10のように、前作ドラクエ9の開発開始前から、すでに開発がスタートしていたという例もあります。「何年何月から開発開始したか」は公表されないので、上の表はあくまで目安とお考えください。

そして、2024年5月4日時点で、前作ドラクエ11の発売から2471日経過しています。今の段階ですでに過去最長であり、発売日どころか画面写真1枚すら発表されていないことを考えると、異常事態といえます。

わたしは、ドラクエ12の開発が相当なレベルで難航しているのは間違いないだろうと見ています。発表された「コンテンツ廃棄」に、ドラクエ12がどの程度関連しているかは、次の3パターンが考えられます。

  • ドラクエ12の開発を中止、ナンバリングは11を最終とする
  • ドラクエ12の開発を一旦中止制作チームを再構築して数年後の完成を目指す
  • 今回の特別損失にドラクエ12は無関係

上記それぞれについて解説していきます。

ドラクエ12の開発を中止、ナンバリングは11を最終とする

今回の発表で考えられる最悪のパターンがこちらです。

ドラクエ12を制作中止するというのは、ドラクエの外伝的作品の制作中止とは意味合いが全く異なります。ドラクエ12を作らない以上、ドラクエ13はあり得ません。つまり、2017年に発売したドラクエ11をナンバリングの最終作として、今後は開発しないということを意味します。

その場合、今後のドラクエは、MMOでありサービス継続中のドラクエ10と、スマホを含む外伝的作品やリメイクしか作らないということになります。

これは確かに数年おきに発生する巨額の製作費を抑制できますが、それによって生じる利益もなくなるということです。スクエニにとっては、2大IPであるドラクエとFFのうち、片方を完全に過去のものとしてしまうわけですから、ドラクエに代われるような新規IPを生み出せない限り、現状のスクエニにとっては、デメリットの方があまりにも大きい判断ともいえます。

2021年に亡くなったすぎやまこういち先生の遺作は、ドラクエ12の音楽だということもすでに発表されています。すぎやま先生が心血を注いで作った最後の楽曲が世に出ないままお蔵入りしてしまうことになると、ゲーム音楽文化という意味においても、あまりにも損失が大きい話です。

ドラクエ12の開発を一旦中止、制作チームを再構築して数年後の完成を目指す

個人的に最も可能性が高いと考えているのはこちらです。現体制のまま開発を継続しても目途が立たないので、制作会社を含めて全面的に見直して、最初からドラクエ12を作り直すということです。

これもリスクは高いですが、HDゲームではないものの、過去に同様の状況に陥り、最初から作り直すという判断を下した結果、大成功を収めたFF14という前例があります。

※FF14の「新生」については、過去記事で解説していますので、ここでは割愛します。

今回の特別損失について発表される直前に、「ドラクエ責任者が交代する」旨の一部報道が行われました。この「責任者」というのは、スクエニでドラクエ関連ゲームの開発を担当する第二開発事業本部の本部長を務めていた三宅有さんで、記事によれば、4月から三宅さんは「スマートフォン向けゲームを扱う新設されたスタジオの責任者に就任」していて、後任は「齊藤陽介氏が候補」とあります。

2024年5月4日現在、この件に関しては一部で報道されているのみであり、情報元は「複数の関係者」とされています。記事内においても、スクエニHD側の広報担当者はコメントを控えている状況であり、スクエニからの正式発表は何も行われていない点にご留意ください。
2018年以前からドラクエ10をプレイされている方なら、「齊藤陽介」さんの名前を聞くと、ピンと来た方もおられるでしょう。彼は通称「よーすぴ」として親しまれてきた、ドラクエ10の初代プロデューサーであり、ドラクエ11でもプロデューサーを務めています。超DQXTVにも出演し、プロデューサーを退任後も何度となく出演していますので、「出たがりおじさん」の異名を持っていますw
ドラクエ10の企画を立ち上げ、10年以上続くMMOに成長させるかじ取りを担ったほか、ドラクエ11でも開発が難航していた際に急遽プロデューサーに就任し、発売に漕ぎつけたという実績を持つ方なので、ドラクエ部門全体を統括する責任者に就任したとすれば、十分納得できる話でもあります。
その齊藤さんが、今回の特別損失発表後に、X(旧Twitter)で意味深なポストをしています。

齊藤さんはスクエニの取締役と執行役員も務めていますので、昨年就任された桐生隆司社長の体制下で、スクエニの経営を担う立場でもありますから、適当なことを言っているだけではないでしょう
ただし、その「新生スクエニ」に「新生ドラクエ12」の意味を含んでいるのかどうかはわかりません。

今回の特別損失発表にドラクエ12は無関係

これは一番拍子抜けする結果で、かつ安心できるパターンです。巨額の特別損失にドラクエ12は関係なく、制作は今後も継続されるということです。

ただし、そうであれば、スクエニHDからのリリースではなくても、たとえばドラクエ全般の公式Xから「ドラクエ12の開発は継続しているのでご安心ください」程度の発表はあって然るべきです。現時点でそういうものが一切なく、それが不安を伴う憶測を呼ぶ元凶となっているのだと、わたしは思います。

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鳥山明先生ご逝去による影響

2024年3月1日、ドラクエシリーズを第1作からデザイン面で支えてくださった漫画家、鳥山明先生が逝去されました。ゲームのみならず、日本の漫画界、アニメ界にとっても非常に大きな損失であり、幼い頃から鳥山先生の作品、主にアニメやドラクエに親しんできたわたしも、とても悲しいです。

ドラクエの制作では、ゲームデザインの堀井雄二さん、キャラクター&モンスターデザインの鳥山明先生、そして音楽担当のすぎやまこういち先生が「ビッグ3」と呼ばれる存在であり、そのうちおふたりがいなくなってしまったことで、そういう意味でドラクエ12の制作を危ぶむ声が出てもいます。

ただ、もちろん影響が皆無とまでは言いませんが、きちんと開発が行われているなら、そのことがドラクエ12の制作中止の原因となるようなことはないと、わたしは考えています。

まず、音楽については、すぎやま先生のご逝去を伝える公式発表の中で、ドラクエ12の音楽が最後のお仕事となった旨の記載があります。ゲーム内で必要な音楽すべてが作られていたかどうかまではわかりませんが、これまでドラクエのために500曲を超える楽曲を遺されていて、実際にドラクエ10においては、その過去曲の多くを使用して制作されていますから、音楽がないために制作できないことは考えづらいです。

そしてキャラクターデザインを含む、鳥山先生の担当分野に関しては、2021年にドラクエ12の制作が発表され、そこから3年も経つ2024年までに、デザインが何もできていないということは、常識的に考えてもあり得ないでしょう。もし本当にできていなかったとすれば開発以前の問題です。きちんと滞りなくデザインを発注されていたのであれば、鳥山先生の描くドラクエ最後のお仕事が遺されているはずだと思っています。

すぎやま先生の音楽、鳥山先生のデザインが、それぞれ唯一無二の存在であったことは間違いありませんが、ドラクエ10においては、Ver.6以降、すぎやま先生の新曲はありませんし、鳥山先生が実際に描かれた設定イラストなども、公表されている限りでは「ドラゴンクエストX オンライン Xth ANNIVERSARY BOOK」に掲載された、Ver.5のラスボスデザインが最後です。

ドラクエ10の Ver.6以降では、鳥山先生風のキャラクターを、アートディレクターの中津英一朗さんが中心となってデザインされています。鳥山先生以外によるデザインには賛否両論あるでしょうが、契約の問題なのか詳細はわからないものの、Ver.6以降のデザインを鳥山先生に依頼できなくなっていたことは事実であり、そうなのであれば、わたしたちファンが「ないものねだり」をしても仕方がありません。

ドラクエ12も、すでに鳥山先生にデザインして頂いているのであれば、それをお蔵入りさせる事態は絶対に避けなければなりませんし、できていなくても、ドラクエ10と同様の方式で、鳥山先生風のデザインを起こすことは可能だと思っています。

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リメイクに巨額の製作費は必要?

ドラクエ12と並んで、開発が難航していると目されているのは、「ドラクエ3 HD-2D」です。これもドラクエ12と同日に発表され、実際にお城やバトル画面などの映像が一部公開されたにもかかわらず、そのまま追加情報が一切なく、3年近く経過している状況です。

このドラクエ3のリメイク版に、本当に221億円のうち少なくない比率を占める資金が投入されていて、開発中止の瀬戸際にあるのだとすれば、この企画にGOサインを出した責任者に一言申し上げたいと思います。

え、一体何考えてるの?

ドラクエシリーズの各作品は、これまで多数のリメイク作品が発売されています。ドラクエ3も例外ではなく、1988年にファミコン版が発売されて以降、1996年にスーパーファミコン版(約140万本)、2000年にゲームボーイカラー版(約75万本)、2009~2010年にiアプリ版/EZアプリ版(あわせて約100万DL)、2011年にWii版(約40万本)、2014年にiOS/Android版(スマホ版)、2017年にPS4版/3DS版、2019年にNintendo Switch版が出ています。(ドラクエ3単独ではなく、ロト三部作としてセットで出たものも含みます)

2024年時点でも、スマホ版とPS4版、Switch版は購入可能であり、現行機種で遊べなくなったわけではありません。そこに、さらに新たにHD-2Dで作り直したリメイク版を発売するというのです。

開発にそれほどコストをかけず、発表から1年くらいの間に発売されるものであれば、まあ買ってみようかなと考えていました。ところが3年経って発売の目途が立たないという、とんでもない状況です。

ドラクエ3は間違いなく名作です。それはわかります。

だけど、もとは1988年に発売された古いゲームです。容量も2Mbit+64Kという、今では写真1枚にすらならないほどで、その少ない容量に目一杯詰め込まれたストーリーですから、現行のゲームに比べるなら、ストーリーのボリュームが絶対的に小さいことは明白です。

昔からファンの多いゲームなので、リメイク版が出れば買うプレイヤーはある程度はいます。それでも(スマホ版以降の販売本数はわかりませんが)これまで最高140万本しか売れていないのです。

そもそもリメイク版には、おそらくそこまで革新的なグラフィック性能とか、そういうものを求められてはいないと思うのです。たとえばドラクエ11のゲームエンジンをそのまま流用して作ったとしても、開発コストを抑えられる上、既存のリメイクから見れば十分きれいなグラフィックを実現できたのではないでしょうか。過去、SFC版のドラクエ3はドラクエ6の流用でしたし、PS版のドラクエ4はドラクエ7の流用で作られましたが、オリジナルに比べて、十分に遊びやすくてグラフィックのきれいなリメイクが出来ていたではありませんか。

これはあくまでわたしの私見です。中には超美麗グラフィックで作られたドラクエ3を心待ちにしている方もおられるでしょうし、それは全く否定しません。だけど、3年経っても世に出せず、コストがかさんで会社が傾くような事態の原因になったのだとすれば、本末転倒にも程があるでしょう。

個人的な考えでは、今さらなドラクエ3よりも、ドラクエ10の Ver.7と同時発売で、ドラクエ9のリメイクを出してくれた方が、スクエニにとって、よほど利益になっていたのではないでしょうか。現行機種では遊べず、これまで一度もリメイクされておらず、さらにVer.7のストーリーと深い関係があるからです。それもHD-2Dみたいなコストなど一切かけず、なんならドラクエ10の追加コンテンツでも良かったくらいですw

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おわりに:5月27日に何らかの発表が?

今のわたしは、ドラクエ10をセカンドライフのような位置付けで楽しんでいるので、ドラクエ12を心待ちにしている他の皆様と比べれば、今回の発表については、わりと一歩引いた目線かもしれません。極論してしまえば、ドラクエ12の開発が仮に中止されたとしても、ドラクエ10さえ無事なら生き延びられますw

ドラクエ12を楽しみにしていないわけではないので、もちろん出れば買いますよw

そうは言っても、ドラクエ12の開発を中止しなければならないほど、スクエニの経営が追い詰められているのだとすれば、MMOだからといって安閑としていられなくなる可能性も出てきます。MMOの運営母体はしっかり利益を出して、健全な経営を続けてくれなければ安心できません。

今回は、特別損失に関する発表について、それにドラクエ12がどの程度関わっているのか、その可能性などを、わたしなりに考察してみました。

今年も「ドラクエの日」まで1ヶ月を切りました。決算発表は5月13日なので、そのどちらかの日に、ドラクエ12についても何らかの発表があるでしょう。事情が事情だけに「楽しみに待つ」ことは難しくなりましたが、少しでも良い方向へ進もうとしていることを祈りつつ、待ちたいと思っています。

それではまた次回♪

それではまた次回♪

   
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