ドラクエ10の音楽

このページは約8分で読めます。
記事内容は掲載日時点で判明している情報に基づきます。過去の記事は、最新の内容ではない点にご留意ください。掲載後にゲーム内で仕様変更等が行われることもあります。仮説等は掲載後に異なる事実が判明していることもあります。
このページは 全6ページ中 3ページ目です

最初から

前のページ

次のページ

DQ10アストルティア雑記
スポンサーリンク(広告)

オーケストラ音源化は実現するの?

2022年現在、ドラクエ10で使用される音楽は、東京都交響楽団(都響)が演奏し、CDに収録されているものについては、すべてオーケストラ音源が使用されています。

実はサービス開始当初はそうではありませんでした。ドラクエ10は、2012年8月にWii版からスタートしましたが、その時点では交響組曲版のCDは発売されておらず、発売されたのは同年12月でした。(収録自体は6月に大田区民ホールアプリコで行われています)

ただし、翌年3月に発売される Wii U版からは、オーケストラ音源になる旨が当初から発表されていましたし、その後9月に発売されたWindows版もオーケストラ音源となり、12月に発売されたVer.2からは、Wii版も含めて全てオーケストラ版に差し替えられました。

ドラクエシリーズの音楽は、2004年に発売されたPS2版ドラクエ5で初めてオーケストラ音源が使用されました。それ以降は、3DS版のドラクエ7、ドラクエ8、ドラクエ11Sおよびその移植版と、まだ交響組曲の収録が行われていなかった新作(ドラクエ11のPS4/3DS版)や、ハードや容量の制約などで難しいと思われるDS版やスマホ版を除き、基本的にはオーケストラ音源の使用が定着しています。

はじめてゲーム内でオーケストラ曲を聴いたときは感動しました

はじめてゲーム内でオーケストラ曲を聴いたときは感動しました

どこのインタビューか失念してしまいましたが、Wii U版の発売前に、すぎやま先生ご自身が「冥王を倒すのを(Wii U版発売まで)待っている」という趣旨のことを話されていた(あるいは話されていたと関係者が語った)のを読んだ記憶があります。つまり「エンディングをオーケストラ版で迎えたい」ということで、ドラクエのゲーム内にオーケストラ版の自作曲を使用することは、すぎやま先生ご自身のファミコン時代から長年の夢であり、技術的に収録が可能になってから実現したのも、ご本人の意向もあったのでしょう。

わたし自身は、Windows版のベータテストで、初めてドラクエ10に触れたのですが、そのときはWii版と同じシンセサイザー音源でした。といっても、その後の先行体験版からはオーケストラ音源になったため、1ヶ月程度の付き合いでしたし、とにかく当時初めて経験するオンラインのドラクエの楽しさを知り、毎日ゲームそのものに夢中だったため、その音楽がどうだったかについては、正直あまり覚えてはいませんw

そのため、当時のドラクエ10の音楽(シンセサイザー音源)の全体的な良し悪しについては、音源化されているわけでもないので、わたしには何ともいえないのですが、ひとつだけ悪い意味で伝説的になっている曲があり、それは当時のゲーム映像で何度も聴いたことがあります。そう…「テレレー」ですねw

「テレレー」と揶揄される「刃の旋律」は、ドラクエ10の通常戦闘BGMとして使用されています。この曲そのものは非常にかっこいい曲で、オーケストラ版となった現在では、あまり「テレレー」などとは呼ばれなくなりましたが、シンセサイザー音源のそれは、まさしく「テレレー」でした。曲調がのっぺりしてるんですよねw

シンセサイザー音源や内蔵音源でも、アレンジャーが素晴らしければ、原曲の味を損なわないどころか、オーケストラ版とは全く異質の魅力を出してくれることもあるのです(詳しくは後述します)。この「テレレー」のシンセサイザー音源が作られた当時も、当然すぎやま先生ご自身もチェックされているはずなんですが、ちょっと頂けないアレンジだったように、わたしは思います。この記事を書くにあたって改めて聴いてみたところ、ドラムなどいい感じの部分もあるにはありましたけど、やっぱり間延びしたようなテンポと「テレレー」の間の抜けた音がちょっと…w

さて、Ver.2以降の「新曲」については、すべてシンセサイザー音源での収録となっています。これは単純に、オーケストラで演奏された音源がまだ収録されていない、あるいは収録はされたものの、ゲーム音源として適した素材がないためだと考えられます。

その点についてはやむを得ない面もありますが、Ver.2で実装された「新曲」は、その当時からオーケストラ化が強く望まれていて、提案広場にも度々上がりますし、2018年のプレイヤー座談会でも話は出ていました。

音楽について
すべての曲をオーケストラバージョンにして欲しい。また、曲名と初出のタイトル名を画面隅に表示させて欲しいというリクエストをいただきました。
オーケストラバージョンについては、すべての曲を対応させるのはなかなか難しいです。曲名についてはCDで確認していただけるなどしていただけるとありがたいです。

まあ、実質ゼロ回答ですねw

どうして「なかなか難しい」のかを考えると、そこは「技術的に難しい」わけではないでしょう。

すぎやま先生にオーケストラスコアを書いて頂き、都響の演奏で指揮して頂き、それを収録させて頂く、という一連のプロセスが難しかったのではないでしょうか。

実は、ゲーム内でオーケストラ化されていない曲の中にも、すでにオーケストラスコアが出来上がっているものは複数あります。

すぎやま先生は、2016年に「84歳292日」にして「最高齢でゲーム音楽を作曲した作曲家」とギネス認定されましたが、それが発表されたのは「第30回ファミリークラシックコンサート~ドラゴンクエストの世界~」のときで、ステージ上で認定証授与式も行われました。そしてわたしは、それをニコ生の完全生中継で視聴していました。

プログラムによれば、このコンサートでは次の曲目を演奏されています。

  • アンルシアの願い~アンルシアの恵み~勇者アンルシア
  • 砂漠の王国
  • 晴れわたる世界
  • 飛竜は空高く
  • 神に挑みし者
  • 竜族の不穏~いにしえの竜の怒り

残念なことに、この中継映像は再視聴不可なのです。こんなに貴重な映像をしっかりと収録しているのだから、できればソフト化してもらえないものかなと長く願っていますが…

少なくともVer.3までの新曲は、オーケストラ演奏が可能なことははっきりしました。おそらく、後に都響の演奏でCD化することも、そしてその後のゲーム内音源の差し替えも、計画自体はあったのではないでしょうか。

さらにVer.4の「未来のために戦う」も、すぎやま先生ご自身の指揮で、東京都交響楽団の手によって、コンサートで演奏されています。これはゲーム内で実装される半年前のことでした。詳細のプログラムは不明ですが、サイトには「Ver.2、ver.3」という記載もあります。

すぎやま先生の公式サイトにあるコンサート情報によりますと、2019年9月19日、東京芸術劇場で開催されたドラクエ11のコンサートが、すぎやま先生が実際に「指揮」として出演された最後だったようです。2020年5月にも京都コンサートホールでタクトを振る予定はあったようですが、残念ながら新型コロナウイルス感染拡大防止という理由で中止されています。

ここからは推測の域を出ない話であることを、最初におことわりしておきます。

すぎやま先生は、おそらく「Ver.5」の完結後に、Ver.2~5の楽曲のオーケストラ収録を行い、CD化されるようなことを考えておられたのではないでしょうか。そして、その後にはゲーム内音源の差し替えも想定しておられたと思います。

Ver.5というのは、以前の記事でも書いたように、ドラクエ10「第1部」完結と呼べる内容で、ドラクエ10の開発初期から構想されていた一連のストーリーの完結編にあたります。

2022年3月現在はVer.6で、今わたしたち冒険者は、英雄として招待しておきながら、すさまじく性格の悪い天使たちに、試練だなんだと上から目線あれこれやらされている状態ですが、このお話は開発初期には全く考えられていなかった内容です。

そして、ドラクエ10の開発初期からメインスタッフとして携わっていたすぎやま先生も、当然そのことはご存じだったはずです。

Ver.5までの曲は自分が作る。それ以降は過去作の楽曲でやってくれないか

そういうお話が、実際に関係者に対してあったかどうかはわかりませんが、すぎやま先生ご自身の年齢、ご病状、結果的に遺作となってしまったドラクエ12の音楽制作など、様々な状況の中で、きっとそのようなご判断があったような気がしているのです。

そしてドラクエ10(第1部)の音楽の集大成として、Ver.2~5のオーケストラ収録を考えておられたのではないかと…

繰り返しますが、これはあくまで推測です。

しかしながら、コンサートでドラクエ10を演奏するのであれば、すでにある交響組曲部分だけでも良いはずなのに、Ver.2~4の曲も繰り返し演奏されていたこと。そのためのオーケストラスコアも作っていたこと。さらには曲数は少ないとはいえ、異界滅神ジャゴヌバのテーマと呼べる曲など、Ver.5の新曲まで用意されていたこと。

それらを考えると、すぎやま先生ご自身も、スケジュールやご病状などの問題を抱えつつも、Ver.2以降もオーケストラ音源化を強く望まれていたのではないでしょうか。

すぎやま先生が出演されない、あるいはご自身は「お話」などの形で(指揮以外で)出演されるコンサートでも、タクトを任されていた指揮者の方は複数おられますし、スクエニ側からスギヤマ工房と都響に働きかけることにより、すぎやま先生の遺志を受け継ぐ形で、オーケストラ収録、およびオーケストラ音源化は、十分に実現可能なのではないかと思いますし、そうなることをわたしは願っています。

     
DQ10アストルティア雑記

この記事へのコメント

コメント

タイトルとURLをコピーしました