Ver.6のストーリーが生まれた背景
ドラクエ10の開発初期の段階で、すでに「物語全体のラスボス」が「異界滅神ジャゴヌバ」であることが決められていたと、安西ディレクター自身が言及されています。
サービス開始後、9年にわたって展開される長い物語のプロットが、すでに開発初期の段階で形成されていました。当初の想定とは異なってきたと考えられる部分はあるにせよ(たとえば、レンダーシア大陸がオーグリード大陸やウェナ諸島と地続きという設定など)、物語の骨格は「異界滅神ジャゴヌバとの戦い」を最終的な到達点に据えて展開していたことは間違いありません。
Ver.1~5の物語は、開発初期から骨太の柱をドン!と中央に築き、それに沿う形で各メジャーバージョンごとの柱を5本立てて、それぞれの細部を作ってきたといえるでしょう。
そして、その長い物語はVer.5で完結しました。
ドラクエ10のサービスが開始する前、当時の齊藤陽介プロデューサーが「10年は続けたい」という趣旨の発言をしたのは有名な話です。
この時点では本当に10年以上続くかどうか、誰にもわからなかったのです。ドラクエ10がオンラインゲームだと発表された瞬間、スクエニの株価が下がったほどで、10年以上にわたって継続的な利益を生み出すコンテンツになると信じた人は驚くほど少なかった、まだそういう時代でした。
ちなみに、ドラクエ10がオンラインゲームであることが発表された2011年9月5日、スクエニHDの株価は1,723円まで急落しました。この時に株を買った人が2023年11月22日現在も持ち続けているとすれば、この日の終値は5,246円ですので、その資産価値は3倍以上になっています。しかも配当は別です。買っとけばよかった!!w
ジャゴヌバを倒すまでの物語を10年近くかけて展開するというロードマップが、開発初期の段階で作られていた……かどうかはわかりませんが、仮に運営が早期終了したとしても対応できるように、最初にストーリーの大枠を最後まで作っておき、それに沿って開発を続けてきたのでしょう。
ところが、ドラクエ10は多くのプレイヤーに支持され、本当に10年以上続くことになります。ジャゴヌバを倒す道筋が見えてきても、まだまだサービスが続きそうな気配です。そうなると、当初から構想していた物語が完結した後も、新たなストーリーを作らなければなりません。
全く白紙の状態から新たなストーリーを作るなら、それほど難しいことでもないでしょうが、ドラクエ10はオンラインゲームであり、主人公を変えるわけにはいかないので、ジャゴヌバと戦い勝利を収めた、もはや世界の救世主と呼べる存在の主人公で、その続きの物語を作る必要があります。
さて、ドラクエ10は、もともとドラクエ9の続編だと言われています。Ver.1時代に作られた「神話篇」には、ドラクエ9との繋がりを強く意識させる要素が多数登場しています。ただし、現在ではプレイできない期間限定クエストとして作られた「予兆クエスト」部分には矛盾点も多いそうです。(わたし自身はVer.1.5中期以降の冒険者なので、すでに配信終了していた「予兆クエスト」はプレイしていません)
ちなみに、すぎやまこういち先生は、「ドラクエ9から新しいシリーズを始める」という堀井雄二さんの意図に基づいて、ドラクエ9のオープニング「序曲IX」を作曲されています。そして「序曲IX」のイントロがそのまま「序曲X」に受け継がれている点からも、9~10は同じシリーズとして作られていると考えられます。その後のドラクエ11は「ロトシリーズ」にあたるため、9~10とイントロが違いますよね。
Ver.5までのメインストーリー内でも、ドラクエ9との繋がりを具体的に描くことはほとんどなく「匂わせる」程度でした。たとえば、女神ルティアナ様の故郷である「とこしえのゆりかご」が、ドラクエ9の世界そのものだという考察もありますが、これも本編中で断定されたものではなく、推測の域を出ていません。
ドラクエ9といえば、天使たちの住む「天使界」が物語のスタート地点であり、主人公自身も天使として登場します。ジャゴヌバを倒した後は、これまで断片的に描かれてきたドラクエ9との繋がりを具体的なものにしていくと同時に、天使の存在をクローズアップしていく意図もあったのでしょう。
おそらく、ドラクエ9とのシリーズ的な意味での繋がりは、Ver.1~5のストーリーを作る段階で決められていたのでしょう。ただ、それを具体的に描いていくことは、「(サービスが続いて)Ver.6以降をリリースすることがあるのなら」と、将来の運営に託された課題とされていたのではないでしょうか。
そしてVer.5完結後の新たなメインストーリーは、ドラクエ9との繋がりをより強く意識する形で作られました。それがVer.6「天星の英雄たち」だったというわけです。
ドラクエ9との繋がりは、Ver.7でも、さらに踏み込んで描かれる可能性があります。ナンバリングではドラクエ9にのみ登場するモンスター「ウパソルジャー」が登場するほか、一部の画面写真が発表されたばかりなので、憶測の範囲ではありますが、登場する建物や名称に、ドラクエ9との関連を思わせるものがあると、すでに一部で言われているようです。
Ver.6と過去バージョンの関わり
Ver.5までの間、各地に伏線となり得る要素は散りばめられていました。たとえばアラモンド鉱山、ジュレイダ連塔遺跡にいる亡霊などは、Ver.5までの物語が完結した後に使うことを想定して、実装時点では特に言及することもないまま、用意しておいたのだろうと考えられます。ストーリーやクエストで触れられてはいても、まだまだ掘り下げる余地があった要素も多く、それらもVer.6で順次登場しています。
ドラクエ10に「天使」そのものは、長らく登場していませんでしたが、Ver.5.2~5.3期間に実装されたクエストシリーズ「破界篇」に、ファビエルさん、メドナムさんという天使が登場します。おそらく時期的にも「破界篇」が実装された時点では、すでにVer.6ストーリーの大枠は固まっていたのでしょう。
それまでのストーリーやクエストで断片的に登場していた「歴史上の人物」も、Ver.6では「英雄」という形で実際に登場します。たとえばラダ・ガートさんは、Ver.1時代のクエスト「闘神ラダ・ガートの誓い」にも名前が登場していますし、不思議なチカラで時空さえをも超えてしまうフォステイルさんと主人公は、彼が生きていた500年前を含めて、何度か会っています。
このように「ジャゴヌバ後」を見据えて準備されていたと思われる要素もありますが、Ver.6のシナリオを作る段階で、後付けで設定されたであろう要素も数多くあります。
たとえば、エテーネの村で暮らしている頃から「ずっと主人公を見てきた」という設定のユーライザさん。Ver.6のメインヒロインとなる彼女も、本当にVer.1の段階でそのキャラクターが作られていたとは考えづらく、冥獣王ネルゲルとの戦いで足場として使用した光輪も「実はユーライザさんが生み出したものだった」というエピソードなど、後付け臭がプンプンする最たるものですねw
とはいえ、長く続いている物語において「後付け設定」が生まれることはよくある話です。それが「ああ、なるほど!」と納得できる内容であれば、別に良いのです。ところが、この光輪のエピソードひとつを取ってみても、わたしはかなり強引な印象を受けました。
もうひとつ書いておきますと、ジャゴヌバの真の名は「ジア・グオヌバ」で、実はジア・クト念晶体だった、という設定も、後付け感もさることながら、彼自身の目的が「創生の魔力により生まれたアストルティアを無に帰す」ことであり、ジア・クトの目的である「創生のチカラを収穫する」こととは正反対になってしまうという矛盾も生じています。(これに関する考察は参考リンク参照)
Ver.6のストーリーは誰が作ったのか
Ver.6.5後期のストーリーが公開された後、前述の「おはなし感想広場」を見ると、「今回のストーリーは素人が書いたのですか?」という、非常に辛辣なコメントもありました。
そのコメントを書いた方は、それほどまでにストーリーへの落胆が大きかったのだと思いますが、シナリオチーフ、すなわちVer.6のストーリーを取りまとめた人物は、Ver.2~5と同じく成田篤史さんです。
複数おられるシナリオスタッフの中に、仮にシナリオ作成能力が著しく劣る人がいたとしても、その人の書いたシナリオを採用するかどうかを含めて、最終的に決定する立場にいるのは成田さんです。つまり、シナリオ制作の責任者はこれまでと変わっていないのです。
成田さんは、ドラクエ7から長くドラクエシリーズのシナリオに携わっておられる方で、ドラクエ9でもシナリオチーフを担当されています。ドラクエ10ではVer.2以降ずっとシナリオチーフを担当されています。ドラクエ10の物語の生みの親のひとりであり、改めて言うまでもなく、素人どころかプロ中のプロです。
それだけに、これほどまで酷評されたVer.6のストーリーには、驚きを隠せずにいます。
コメント
バージョン5で追加されたコンテンツも少ないだろw
運営に一字一句読んでもらいたいですね。。
まずはver7はver6のようにはならないと安心させる放送をして欲しかったです。。ver6.4メインストだけはやって良かったと評価してますが。
加えてコンテンツの少なさもver6の問題ですね。
追加されたコンテンツは以下くらいでしょうか。
・パニガルム
・咎人
・ブートキャンプ
・天使のフィットネス
(天使のフィットネスとかホント何これって感じです)。